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国連憲章調印から80年 揺らぐ国際秩序の中での意義とは?

ロシアが議長を務めたニューヨークでの安全保障理事会会合で国連憲章のコピーを掲げるリンダ・トーマス・グリーンフィールド元米国連大使 
ロシアが議長を務めたニューヨークでの安全保障理事会会合で国連憲章のコピーを掲げるリンダ・トーマス・グリーンフィールド元米国連大使 EPA /JUSTIN LANE

米国が介入したイスラエル・イランの軍事衝突、またロシアによるウクライナ侵攻など国際法の原則が軽視される事例が相次ぐ中、国連憲章は26日、調印から80年を迎えた。国連憲章とは何か、その意義は保たれているのか。その歴史的背景と現代の課題を踏まえ、重要なポイントをまとめた。

80年前の1945年6月26日、国連憲章が誕生した。外部リンク今日、ニュースでこの言葉が言及されるとき、それは通常、ミサイル攻撃や侵略、あるいは領土の併合といった事象が憲章違反であることを示すために使われる。では、憲章には一体何が書かれているのか。5つの重要なポイントをまとめた。

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国連憲章とは何か?

国連憲章は国連の設立根拠となる基本文書で、1945年6月26日のサンフランシスコ会議において50カ国が署名、同年10月24日に発効した。

国連憲章は国際法の基盤を成し、その基本原則を定める。これらの原則には国家主権、国家間の法的平等、武力行使の禁止(自衛の場合または安全保障理事会の決定による場合を除く)、人権の尊重、そして国際協力が含まれる。

これは言うなれば多国間システムの憲法のようなもので、国連に加盟したすべての国が尊重することに同意した、拘束力のある国際条約だ。111条から成り、19章に分かれる。

この憲章はまた、1948年の世界人権宣言や、より最近では2024年の未来のための協定など、他の画期的な国際条約への道を開いた。

>> 80年前の国連誕生の背景に関する記事もご覧ください。

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国連憲章に署名

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欧州終戦から80年 多国間主義を夢みた国連に試練

このコンテンツが公開されたのは、 1945年5月8日、欧州で公式に第二次世界大戦が終結し、その後恒久平和の確立を目指して国際連合が生まれた。設立から80年が経ったいま、過激主義の台頭と公然たる紛争の再発が国連にとって大きな試練となっている。

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国連憲章の目的は?

主たる目標は世界平和の促進だ。この使命は安全保障理事会、特に常任理事国である中国、米国、フランス、英国、ロシアの5カ国に主に委ねられている。しかし、紛争がかつてないほど頻発する今、これを成功と呼ぶことは困難だ。
 
「ロシア、米国、イスラエルによる一方的な武力行使を目の当たりにすると、平和と安全保障の面で暗い見通しを描きがちだ」と、ジュネーブ国際・開発研究大学院のヴァンサン・シュタイユ教授(国際法)は断言する。その一方で、「技術協力の分野では目に見えないながらも多くの成功例が生まれている」とも話す。
 
国連憲章は保健、電気通信、気象など、他の多くの分野における協力の基盤も築く。これらの活動は、大半がジュネーブに本部を置く国連の技術機関に集中している。

国連憲章の軽視、今に始まったことか?

先週のイスラエルと米国によるイランの核施設への攻撃や、ロシアによるウクライナ侵攻の継続など、最近の出来事を見ると国連憲章は以前ほど尊重されなくなっている印象を受ける。

「確かに、私たちもそう感じている。しかし、俯瞰ふかんすると大国が国際法に違反するという事実は、根本的に新しいものではないことに気づく」とシュタイユ氏は説明する。
 
過去数十年間で、いくつかの大国が様々な紛争において国連憲章を無視してきた。1950年の朝鮮戦争、1960年代のベトナム戦争と米国の介入、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻、そして2003年に米国とその同盟国が開始したイラク戦争がその一例だ。
 
シュタイユ氏によると、今日では特にソーシャルメディアのおかげで、違反行為はかつてないほど可視化されるようになっている。また、国際法に対する国民の意識と知識も高まり、違反行為を非難する声も高まっている。
 
「しかし、今日懸念されるのは、権力者が自らを正当化したり合法的なイメージを演出したりすることさえせずに法律を犯しているという印象を受けることだ」とシュタイユ氏は言う。
 
各国は伝統的に、国連憲章第51条を援用する。加盟国が「武力攻撃」を受けた場合に、安保理が対応するまでの間、個別的または集団的自衛の権利を認めるという内容だ。しかし、正当でない脅威に対する自衛だと主張して戦うときには、その趣旨を捻じ曲げて使われていることになる。
 
シュタイユ氏によれば、近年米国、ロシア、イスラエルがそれぞれ異なる状況で行ってきたように、政府が政権交代という目的を理由に武力行使を正当化してきたという事実は、こうした変化を物語る。

1945年4月25日から6月26日に開催されたサンフランシスコ会議では、50カ国の代表団が国連憲章の内容について議論した
1945年4月25日から6月26日に開催されたサンフランシスコ会議では、50カ国の代表団が国連憲章の内容について議論した KEYSTONE /PHOTOPRESS-ARCHIV/Str

国連憲章の今日の重要性は?

各国が国連憲章を引き合いに出して自らを正当化したり、防衛したりしているということは、憲章の象徴的な意義を示す。例えば中国は、人権を尊重していないという批判に対抗するため、国連憲章に定められた主権と内政不干渉の原則を頻繁に援用する。こうした批判が国連から向けられたものであっても、だ。

しかし、スイスを含む小国にとって、国連憲章はおそらく依然として特に重要な意味を持つだろう。「強国には強者の法がある。国連憲章は弱小国にとって安定と安全保障の足場となることは明らかだ」とシュタイユ氏は説明する。

国連憲章と国連は、植民地からの独立への道を開き、脱植民地化にも寄与した。80年間で、国連加盟国は50カ国から193カ国に増えた。

スイス系フランス人アーティスト、サイプ氏による「進行中の世界」と題された、国連欧州本部(ジュネーブ)にある一時的なフレスコ画の航空写真。2人の子どもが理想の世界を描いている様子が描かれている。このフレスコ画は、国連憲章75周年を記念してスイスから贈られた
スイス系フランス人アーティスト、サイプ氏による「進行中の世界」と題された、国連欧州本部(ジュネーブ)にある一時的なフレスコ画の航空写真。2人の子どもが理想の世界を描いている様子が描かれている。このフレスコ画は、国連憲章75周年を記念してスイスから贈られた KEYSTONE /Valentin Flauraud

国連憲章は改正できるのか?

仕組みは存在する。2つの条項(108条と109条)により、総会の3分の2と安全保障理事会のすべての常任理事国の賛成があれば、修正が可能だ。

憲章は制定以来、数回改正された。最も重要な変更点の1つは、安全保障理事会の非常任理事国を6カ国から10カ国に増やしたことだ。もう1つは、国連経済社会理事会の理事国数が18カ国から27カ国、そして最終的には54カ国に増加した。

今日、より広範な改革を求める声が上がっている。国連憲章改革連合外部リンクは、この条文を抜本改正するための総会開催を要請する(第109条に規定されているとしても、これは初めてのことだ)。

特にブラジル、南アフリカ、インドは賛成している。議論の中心は、常任理事国の拒否権によって機能不全に陥っている安全保障理事会だ。第二次世界大戦後の勢力均衡を反映したその構成を変更するには、憲章の改正が必要となる。

拒否権放棄を現実的だと考える人はいない。しかし、常任理事国を拡大し、例えばアフリカや南米諸国などを加えるとなれば、国際社会の一部の人々の関心を集める可能性がある。

編集:Virginie Mangin、仏語からの翻訳:宇田薫、校正:上原亜紀子

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