The Swiss voice in the world since 1935

トヨタ、沖縄の墓…スイスのメディアが報じた日本のニュース

トヨタの決算発表
8日の決算発表会に臨むトヨタ自動車の佐藤恒治社長 EPA/FRANCK ROBICHON

スイスの主要報道機関が先週(5月5~11日)伝えた日本関連のニュースから、①試練に直面するトヨタトヨタが導く未来のクルマ沖縄に登場した「ロボット墓所」、の3件を要約して紹介します。  

「スイスのメディアが報じた日本のニュース」ニュースレター登録はこちら

試練に直面するトヨタ

トヨタ自動車は8日の決算発表会で、2026年3月期の最終利益が34.9%の大幅減益になるとの見通しを示しました。暗い見通しの背景にあるトランプ関税の不透明性について、ドイツ語圏の大手紙NZZが詳しく報じています。

「世界最大の自動車メーカーは高い収益性を維持しながら、米国における自動車・同部品の輸入関税が25%という高率になる新時代を迎えようとしている」。全品目にかける相互関税については日米間の直接交渉が進んでいますが、トランプ政権は自動車関税も交渉に含めることを拒否しています。石破茂首相はこれに強く反発しており、「この不確実性はトヨタの2025年度の見通しを複雑にしている」と記事は指摘します。

記事が指摘するトヨタの課題は、「日本で少なくとも300万台の生産を続けること」。これは「日本で財政的・技術的に強力なサプライチェーンを維持するために必要とされる」水準で、佐藤恒治社長も7日の会見でこの目標を守る方針を強調しています。記事は、国内生産を維持するためにサプライヤーの生産性をさらに向上させ、自動車生産拠点としての日本の競争力を高める必要があるという佐藤氏の言葉も紹介しました。

記事は、同社がこれまでにも「人気商品の設計や従来の節約に加え、トヨタはサプライヤーの財政的支援と生産性向上に力を入れている」として、過去3年間で3兆7000億円を投じたと伝えています。「トヨタは明らかに、この方針が成功をもたらすことを想定している」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

トヨタが導く未来のクルマ

スイス製小型車
スイス企業が開発した小型車「マイクロリーノ」 Keystone / Gaetan Bally

トヨタに関しては暗いニュースだけではありません。ドイツ語圏スイスの日刊紙ターゲス・アンツァイガーは、未来の都市と交通の在り方を踏まえ、トヨタが開発中の小型車に大きな商機があると報じました。

記事はまず「未来の理想的な都市」像を描きます。ヒトや車両、建物がネットワーク化され、電気自動車、バス、歩行者、自転車がそれぞれ専用レーンを行き交う。そんな未来像に自動車メーカーも追随していると言います。

記事が注目するのは「持続可能な都市計画と将来を見据えたモビリティの模範」とされるデンマークの首都コペンハーゲン。トヨタモーターヨーロッパのモビリティ・プロジェクト責任者を務めるスティン・ピータースさんによると、都市部の道路の平均67%は自動車に、7%が自転車に、25%が歩行者に充てられているとのこと。ピータースさんは、移動手段としては3分の1しか占めていない自動車に最も多くのスペースが割かれていることに疑問を抱いています。

しかし人々が急に自動車のない生活に切り替えるのは容易ではありません。そこでピータースさんは都市向けの自動車を根本的に小型化しようとしています。同社が3月に発表した「FT-Me」は全長2.5mで、駐車に必要なスペースは従来の3分の1ほど。太陽光発電も応用した電気自動車(EV)で、平均的な都市生活を営む人なら数日に1度充電すれば十分だそうです。

FT-Meはまだ研究途中で、記事は「これが実際に機能すれば、カーシェアリングに理想的な車となる。トヨタのビジネスモデルにもなる」としています。トヨタは既に2018年に設立したKinto社を通じ40カ国でカーシェアやライドシェア、サブスクなどを提供しており、「欧州ステランティスが小型自動車で夢見る台数をトヨタが実現する可能性がある」と予測しました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

沖縄に登場した「ロボット式墓地」

墓地
チューリヒ州クローテンの墓地 KEYSTONE/Walter Bieri

沖縄では4~5月は清明祭(シーミー)と呼ばれるお墓参りの季節。お墓は親族が集まって宴会を開けるよう、家ほどの大きさを特徴としています。しかしこうした大きなお墓の確保が難しくなり、自動搬送式のお墓「ロボット式墓所」が登場していることを、NZZが取り上げました。

NZZが取材したのは沖縄初の室内墓所、琉球識名院の琉球御廟。ここには豊田自動織機の開発した自動搬送式の納骨堂があります。同社の物流部門トヨタL&Fの高橋徹也さんによると、厨子(骨壺用の箱)約6000個を納めることができ、今はその半分ほどが埋まっています。同社は日本全国に約60カ所あるロボット制御型納骨堂の半分を運営しており、海外からの関心も高いそうです。

記事はお墓の仕組みや費用を紹介したあと、「大都市で人気が高まっているが、スペースが少なく高価なため、かなり前から予約しなければならない」と伝えています。また「シーミーのおかげで私たちは親戚と連絡を取り合ったり支えあったりできる」と昔ながらの大きな墓を支持する地元住民の声も紹介しました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

地下鉄・東大前駅で包丁襲撃事件外部リンク(5/7)
名和晃平×ダミアン・ジャレ「ミラージュ」がジュネーブに外部リンク(5/7)
インスピレーションの国、日本外部リンク(5/8)
ベルリン行政裁が慰安婦像の設置を認める その歴史は外部リンク(5/8)
ヤドカリ数千匹を所持した中国人3人を逮捕外部リンク(5/8)
ラーメン屋から禅寺まで 日本を特別にするもの外部リンク(5/8)
パナソニック、世界で1万人雇用削減(5/9)
真の日本を体験できる街・大阪外部リンク(5/11)

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス・ニトヴァルデン準州の小学校、スマホ禁止へ」(記事/日本語)でした。他に「例年より20日早く1年分の資源消費」(記事/英語)、「子どもへの体罰禁止法案が下院通過」(記事/英語)も良く読まれました。

週刊「スイスで報じられた日本のニュース」に関する簡単なアンケートにご協力をお願いします。

いただいたご意見はコンテンツの改善に活用します。所要時間は5分未満です。すべて匿名で回答いただけます。

≫アンケートに回答する外部リンク

次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は5月19日(月)に掲載予定です。

ニュースレターの登録はこちらから(無料)

校閲:大野瑠衣子

人気の記事

世界の読者と意見交換

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、[email protected] までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部
OSZAR »